うつろひたるきく。 7巻 紅 葉 賀

蜻蛉日記『嘆きつつひとり寝る夜・うつろひたる菊』 解説・品詞分解

うつろひたるきく

蜻蛉日記(かげろうにっき) 作者:藤原道綱母(ふぢわらのみちつなのはは) 「黒=原文」・ 「赤=解説」・ 「青=現代語訳」 原文・現代語訳のみはこちら 問題はこちら さて、九月(ながつき)ばかりになりて、出で に たるほどに、箱のあるを、 手まさぐりに開けてみれ ば、 人のもとに やら むとし ける文あり。 やら=ラ行四段動詞「遣(や)る」の未然形、送る、届ける む=意志の助動詞「む」の終止形、接続は未然形。 この「む」は、㋜推量・㋑意志・㋕勧誘・㋕仮定・㋓婉曲の五つの意味があるが、文末に来ると「㋜推量・㋑意志・㋕勧誘」のどれかである。 あとは文脈判断。 ける=過去の助動詞「けり」の連体形、接続は連用形 さて、九月ごろになって、(作者の夫の兼家が)出て行ってしまった時に、文箱があるのを手慰みに開けて見ると、他の女のもとに届けようとした手紙がある。 あさましさに見 て けりと だに知ら れ むと思ひて、書きつく。 あさましさ=名詞、意外であきれること、驚きあきれること。 「形容詞+さ」で名詞化したもの て=完了の助動詞「つ」の連用形、接続は連用形 けり=過去の助動詞「けり」の終止形、接続は連用形 だに=副助詞、強調:(せめて)~だけでも。 類推:~さえ れ=受身の助動詞「る」の未然形、接続は未然形。 「る」には「受身・尊敬・自発・可能」の四つの意味があるがここは文脈判断。 む=意志の助動詞「む」の終止形、接続は未然形。 この「む」は、㋜推量・㋑意志・㋕勧誘・㋕仮定・㋓婉曲の五つの意味があるが、文末に来ると「㋜推量・㋑意志・㋕勧誘」のどれかである。 あとは文脈判断。 意外なことだとあきれて(自分が)見てしまったということだけでも(夫の兼家に)知られようと思って、書きつける。 や=疑問の係助詞、結びは連体形となる。 係り結び とだえ=名詞、途切れること、男女の仲が途絶えること む=推量の助動詞「む」の終止形、接続は未然形。 この「む」は、㋜推量・㋑意志・㋕勧誘・㋕仮定・㋓婉曲の五つの意味があるが、文末に来ると「㋜推量・㋑意志・㋕勧誘」のどれかである。 あとは文脈判断。 らん=現在推量の助動詞「らむ」の連体形が音便化したもの、接続は終止形 ラ変なら連体形。 「(今頃)~だろう」。 係助詞「や」を受けて連体形となっている。 係り結び。 基本的に文末だと「現在推量・現在の原因推量」、文中だと「現在の伝聞・現在の婉曲」の意味で用いられる。 疑わしいことです。 他の女性に送る手紙を見ると、ここへ(あなたが訪れること)は、途絶えようとしているのでしょうか。 など思ふほどに、 むべなう、十月(かみなづき) つごもり方(がた)に、三夜(みよ) しきりて 見え ぬときあり。 むべなう=案の定、思った通り つごもり(方)=名詞、末ごろ、月の下旬・最終日。 晦日(つごもり)。 「方」は接尾語。 対義語は「朔日(ついたち)」 しきり=ラ行四段動詞「頻(しき)る」の連用形、度重なる、繰り返して起こる 見え=ヤ行下二動詞「見ゆ」の未然形、来る、やって来る。 「ゆ」には「受身・自発・可能」の意味が含まれたりもしており、「見ゆ」には多くの意味がある。 ぬ=打消の助動詞「ず」の連体形、接続は未然形。 直後に体言「とき」が来ているため連体形だと判断して、「打消」の助動詞だと分かる。 完了・強意の助動詞「ぬ」の連体形は「ぬる」である。 などと思ううちに、思った通り、十月の末ごろに三晩続けて来ないときがあった。 つれなうて、「しばし試みるほどに。 」など 気色(けしき)あり。 つれなう=ク活用の形容詞「つれなし」の連用形が音便化したもの、平然としている、素知らぬ顔だ。 冷ややかだ、冷淡だ。 「連れ無し」ということで、関連・関係がない様子ということに由来する。 気色(けしき)=名詞、様子、状態。 ありさま、態度、そぶり (それにもかかわらず、夫の兼家は)素知らぬ顔で、「しばらく(あなたの気持ちを)試しているうちに。 」などというそぶりである。 これより、夕さりつ方(かた)、「 内裏(うち)に、逃る まじかり けり。 」とて出づるに、 内裏(うち)=名詞、宮中、内裏(だいり)。 宮中の主要な場所としては紫宸殿(重要な儀式を行う場所)や清涼殿(天皇が普段の生活を行う場所)などがある。 まじかり=不可能の予測の助動詞「まじ」の連用形、接続は終止形(ラ変なら連体形) けり=詠嘆の助動詞「けり」の終止形、接続は連用形。 ここで間接経験の「過去」の意味だと文脈上おかしい。 ここ(私の家)から、夕方ごろ、「内裏(宮中)に断れそうにない用事があるのだ。 」と(夫の兼家が)出かけるので、 心得 で、人をつけて 見すれ ば、「町小路(まちのこうじ) なるそこそこに なむ、止まり たまひ ぬる。 」とて来 たり。 心得=ア行下二動詞「心得(こころう)」の未然形、事情などを理解する。 ア行下二段活用の動詞は「得(う)」・「心得(こころう)」・「所得(ところう)」の3つしかないと思ってよいので、大学受験に向けて覚えておくとよい。 で=打消の接続助詞、接続は未然形。 なる=存在の助動詞「なり」の連体形、接続は体言・連体形。 「なり」というと基本的に「断定」の意味だが、直前に「場所を表す体言」が来るとこのように「存在」の意味となる。 訳:「~にある」 なむ=強調の係助詞、結びは連体形となる。 係り結び たまひ=補助動詞ハ行四段「たまふ」の連用形、尊敬語。 動作の主体(止まった人)である兼家を敬っている。 ぬる=完了の助動詞「ぬ」の連体形、接続は連用形。 係助詞「なむ」を受けて連体形となっている。 係り結び たり=完了の助動詞「たり」の終止形、接続は連用形。 よって、直前の「来」は連用形であり、「き」と読む。 (私は)納得できず(おかしいと思って)、召し使いの者をつけて見させると、「町の小路にあるどこそこに、お止まりになりました。 」と(召し使いの者は)言って帰って来た。 さればよと、 いみじう 心憂しと思へ ども、言は むやうも知ら であるほどに、二、三日(ふつかみか)ばかりありて、暁方(あかつきがた)に、門をたたくときあり。 さればよ=はたしてそうだ、思った通りだ。 「され(ラ変動詞・已然形)/ば(接続助詞)/よ(間投助詞)」 いみじう=シク活用の形容詞「いみじ」の連用形が音便化したもの、(いい意味でも悪い意味でも)程度がひどい、甚だしい、とても 心憂し=ク活用の形容詞「心憂し」の終止形、つらい、情けない、嘆かわしい、いやだ ども=逆接の接続助詞、活用語の已然形につく。 ~けれども む=婉曲の助動詞「む」の連体形、接続は未然形。 この「む」も、㋜推量・㋑意志・㋕勧誘・㋕仮定・㋓婉曲の五つの意味があるが、先程とは異なり文中に来ると「㋕仮定・㋓婉曲」のどれかである。 あとは文脈判断であるが、直後に体言が来ると婉曲になりがち。 訳:「言いようも分からないで」。 この「む」を「意志」の意味でとらえる説もあるため、前記のように訳して誤魔化すべし。 で=打消の接続助詞、接続は未然形。 思った通りだと、たいそう嘆かわしいと思うけれども、言いようも分からないでいるうちに、二、三日ほどして、明け方に門をたたくときがあった。 さ な めりと思ふに、 憂くて開け させ ね ば、例の家とおぼしきところに ものし たり。 さ=副詞、そう、そのように な=断定の助動詞「なり」の連体形が音便化したもの、接続は体言・連体形 めり=推定の助動詞「めり」の終止形、接続は終止形(ラ変なら連体形)。 視覚的なこと(見たこと)を根拠にする推定。 ちなみに推定の助動詞「なり」は聞いたことを根拠にする推定。 憂く=ク活用の形容詞「憂し」の連用形、いやだ、にくい、気に食わない、つらい させ=使役の助動詞「さす」の未然形、接続は未然形。 「さす」には「使役・尊敬」の二つの意味があるが、直後に尊敬語が来ていないときには必ず「使役」の意味になる。 ものす=サ変動詞「ものす」の連用形、ある、いる。 行く、来る。 (代動詞として)~をする たり=完了の助動詞「たり」の終止形、接続は連用形 その(夫の兼家が訪れて来た)ようだと思うと、気に食わなくて、(門を)開けさせないでいると、例の家(町の小路の女の家)と思われるところに行ってしまった。 寝る=ナ行下二動詞「寝(ぬ)」の連体形 あくる=掛詞、「明くる」と「開くる」が掛けられている。 係り結び は=強調の係助詞。 現代語でもそうだが、疑問文を強調していうと反語となる。 「~か!(いや、そうじゃないだろう。 なので、「~かは・~やは」とあれば反語の可能性が高い。 知る=ラ行四段動詞「知る」の連体形。 係助詞「か」を受けて連体形となっている。 係り結び 嘆きながら一人で寝る夜が明けるまでの間は、どんなに長いものか分かりますか。 (いえ、分からないでしょう。 と、 例よりは ひき繕ひて書きて、 移ろひ たる菊に挿し たり。 例=名詞、いつもの事、ふだん。 ためし、先例。 習わし、習慣。 普通 ひき繕ひ=ハ行四段動詞「ひき繕ふ」の連用形、注意を払う、欠点を直す。 身だしなみなどを整える 移ろひ=ハ行四段動詞「移ろふ」の連用形、色あせる、衰える。 色が変わる。 移動する。 時間が過ぎる たる=完了の助動詞「たり」の連体形、接続は連用形 たり=完了の助動詞「たり」の終止形、接続は連用形 と、いつもよりは注意を払って書いて、色あせた菊に挿し(て手紙を送っ)た。 「明くる」と「開くる」が掛けられている。 試み=マ行上一動詞「試みる」の未然形。 この「む」は、㋜推量・㋑意志・㋕勧誘・㋕仮定・㋓婉曲の五つの意味があるが、文末に来ると「㋜推量・㋑意志・㋕勧誘」のどれかである。 あとは文脈判断。 つれ=完了の助動詞「つ」の已然形、接続は連用形 ど=逆接の接続助詞、接続(直前に来る用言の活用形)は已然形 返事は、「夜が明けるまで待とうと試みたけれど、 とみなる召し使ひの、来合ひ たり つれ ば なむ。 いと 理(ことわり)なり つる は。 なむ=強調の係助詞。 結びは連体形となるが、ここでは省略されている。 結びの省略。 理なり=ナリ活用の形容動詞「理なり」の連用形、当然である、もっともだ つる=完了の助動詞「つ」の連体形、接続は連用形 は=強調の係助詞 急用の召使の者が、来合わせたので。 (あなたのお怒りも)まことにもっともなことである。 げにやげに 冬の夜ならぬ まきの戸も おそくあくるは わびしかりけり」 げに(実に)=副詞、まことに、なるほど、ほんとうに なら=断定の助動詞「なり」の未然形、接続は体言・連体形 ぬ=打消の助動詞「ず」の連体形、接続は未然形 わびしかり=シク活用の形容詞「わびし」の連用形、つらい、苦しい、情けない、困ったことだ けり=詠嘆の助動詞「けり」の終止形、接続は連用形。 さても、いと あやしかり つるほどに、 ことなしび たり。 さても=副詞、そういう状態でも、そのままでも、そうであっても、それでもやはり あやしかり=シク活用の形容詞「あやし」の連用形、不思議だ、疑わしい。 不審だ。 つる=完了の助動詞「つ」の連体形、接続は連用形 ことなしび=バ行上二動詞「ことなしぶ」の連用形、何気ないふりをする たる=存続の助動詞「たり」の終止形、接続は連用形 それにしても、たいそう不思議なほど、(兼家は)何気ないふりをしている。 しばしは、忍び たるさま に、「内裏に。 ぞ=強調の係助詞、結びは連体形となるが、係り結びの消滅が起こっている。 本来の結びは「べき」の部分であるが、接続助詞「を」が来ているため、結びの部分が消滅してしまっている。 これを「係り結びの消滅」と言う。 「べき」は連体形だが、これは「を」を受けてのものである。 べき=当然の助動詞「べし」の連体形、接続は終止形(ラ変は連体形)。 「べし」は㋜推量㋑意志㋕可能㋣当然㋱命令㋢適当のおよそ六つの意味がある しばらくは、(本来、他の女のもとに通うのを)隠している様子で、「宮中に。 」などと言っているべきなのに、 いとどしう 心づきなく思ふこと ぞ 限りなき や。 いとどしう=シク活用の形容詞「いとどし」の連用形が音便化したもの、ますます激しい、いよいよひどい 心づきなく=ク活用の形容詞「心づきなし」の連用形、心が惹かれない。 気に食わない、不愉快である ぞ=強調の係助詞、結びは連体形となる。 係り結び 限りなき=ク活用の形容詞「限りなし」の連体形、この上ない。 はなはだしい。 係助詞「ぞ」を受けて連体形となっている。 「や」は間投助詞の文末用法なので、「限りなき」の部分が文末扱いである。 や=間投助詞、意味は詠嘆 ますます激しく不愉快に思うことはこの上ないことよ。 lscholar.

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7巻 紅 葉 賀

うつろひたるきく

蜻蛉日記(かげろうにっき) 作者:藤原道綱母(ふぢわらのみちつなのはは) 「黒=原文」・ 「青=現代語訳」 解説・品詞分解はこちら 問題はこちら さて、九月(ながつき)ばかりになりて、出でに たるほどに、箱のあるを、手まさぐりに開けてみれば、 人のもとにやらむとしける文あり。 さて、九月ごろになって、(作者の夫の兼家が)出て行ってしまった時に、文箱があるのを手慰みに開けて見ると、他の女のもとに届けようとした手紙がある。 あさましさに見てけりとだに知られむと思ひて、書きつく。 意外なことだとあきれて(自分が)見てしまったということだけでも(夫の兼家に)知られようと思って、書きつける。 うたがはし ほかに渡せる ふみ見れば ここやとだえに ならむとすらん 疑わしいことです。 他の女性に送る手紙を見ると、ここへ(あなたが訪れること)は、途絶えようとしているのでしょうか。 など思ふほどに、むべなう、十月(かみなづき)つごもり方(がた)に、三夜(みよ)しきりて見えぬときあり。 などと思ううちに、思った通り、十月の末ごろに三晩続けて来ないときがあった。 つれなうて、「しばし試みるほどに。 」など気色(けしき)あり。 (それにもかかわらず、夫の兼家は)素知らぬ顔で、「しばらく(あなたの気持ちを)試しているうちに。 」などというそぶりである。 これより、夕さりつ方(かた)、「内裏(うち)に、逃るまじかりけり。 」とて出づるに、 ここ(私の家)から、夕方ごろ、「内裏(宮中)に断れそうにない用事があるのだ。 」と(夫の兼家が)出かけるので、 心得で、人をつけて見すれば、「町小路(まちのこうじ)なるそこそこになむ、止まりたまひぬる。 」とて来たり。 (私は)納得できず(おかしいと思って)、召し使いの者をつけて見させると、「町の小路にあるどこそこに、お止まりになりました。 」と(召し使いの者は)言って帰って来た。 さればよと、いみじう心憂しと思へども、言はむやうも知らであるほどに、二、三日(ふつかみか)ばかりありて、暁方(あかつきがた)に、門をたたくときあり。 思った通りだと、たいそう嘆かわしいと思うけれども、言いようも分からないでいるうちに、二、三日ほどして、明け方に門をたたくときがあった。 さなめりと思ふに、憂くて開けさせねば、例の家とおぼしきところにものしたり。 その(夫の兼家が訪れて来た)ようだと思うと、気に食わなくて、(門を)開けさせないでいると、例の家(町の小路の女の家)と思われるところに行ってしまった。 つとめて、なほもあらじと思ひて、 翌朝、そのままにしてはおくまいと思って、 嘆きつつ ひとり寝(ぬ)る夜の あくる間は いかに久しき ものとかは知る 嘆きながら一人で寝る夜が明けるまでの間は、どんなに長いものか分かりますか。 (いえ、分からないでしょう。 と、例よりはひき繕ひて書きて、移ろひたる菊に挿したり。 と、いつもよりは注意を払って書いて、色あせた菊に挿し(て手紙を送っ)た。 返り言、「あくるまでも試みむとしつれど、とみなる召し使ひの、来合ひたりつればなむ。 いと理(ことわり)なりつるは。 返事は、「夜が明けるまで待とうと試みたけれど、急用の召使の者が、来合わせたので。 (あなたのお怒りも)まことにもっともなことである。 げにやげに 冬の夜ならぬ まきの戸も おそくあくるは わびしかりけり」 まことにまことに、(冬の夜はなかなか明けないものであるが、)冬の夜ではない真木の戸も遅く開くのを待つのはつらいことですよ。 さても、いとあやしかりつるほどに、ことなしびたり。 それにしても、たいそう不思議なほど、(兼家は)何気ないふりをしている。 しばしは、忍びたるさまに、「内裏に。 」など言ひつつぞあるべきを、 しばらくは、(本来、他の女のもとに通うのを)隠している様子で、「宮中に。 」などと言っているべきなのに、 いとどしう心づきなく思ふことぞ限りなきや。 ますます激しく不愉快に思うことはこの上ないことよ。 lscholar.

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蜻蛉日記『町の小路の女・うつろひたる菊』(さて、九月ばかりになりて〜)の品詞分解 / 古文 by 走るメロス

うつろひたるきく

7巻 紅 葉 賀 7巻 紅 葉 賀 畳語、繰り返し文字は文字になおしてあります。 和歌部分は『 』で囲んであります。 句点は「。 」になおしてあります。 P0141 朱雀院の行幸は・神な月のとをかあまりのほとなりけり。 よのつねならす・おもしろかへいたひの事なれは・御方 方物見たまはぬをくちおしかり給。 うへもふちつほのみたまはさらん事をあかすおほさるへけれは・しかくを御前 にてせさせ給。 源氏の中將せいかいはをそまひ給ける。 かたてにはおほい殿のとうの中將・かたちようい・なと人に はことなるを・たちならひては・なほ花のかたはらのみやま木なり。 いり日のかけけさやかなるに・かくのこゑまさ り・ものおもしろきほとに・おなしきまひの(1オ)」あしふみ・おももち・よに見えぬさまなり。 ゑいなとしたまへる ほと・これやほとけの御かれうひんかのこゑならんときこえて・おもしろくあはれなるに・みかともなみた〈を〉の こひ給。 かんたちめみこたち・みななきたまひぬ。 ゑひはてて・そてうちなほしたまへるほと・まちとりたるかくの にきははしきに・中將いろあひいととまさりて・つねよりもひかると見えたまふ。 東宮の女御かくめてたきにつけて も・たたならすおほして・かみなとのそらにめてたまひつへきかたちかな・うたてゆゆしとのたまふを・わかき女房 なとこころ(1ウ)」うしとききけり。 ふちつほはおほけなき心のなからましかはとおほすも・ゆめのここちなんし給け る。 ことはてて・宮はやかて御とのゐなり。 けふのしかくはせいかいはにことつきぬな・いかか見たまへつるときこ えたまへは・あいなう御いらへきこえにくくて・いとことにはへりつとはかりきこえたまふ。 かたてもけしうはあら すこそ見えつれ・まひのさま・心つかひなん・いへのこはことなる。 このよに名をえたる・まひのしのをのこともは ・けに〈いと〉かしこけれと・ここしうなまめいたるすちをなんえ見せぬ。 こころみの日・かくつくし(2オ)」つれは ・賀の日や・さうさうしからん・されと見せたてまつらんのほいにて・よういせさせつるなりなときこえたまふ。 中 將君いかに御らんしけん・世にしらぬみたりここちなからこそなときこえたまへり 『ものおもふにたちまふへくもあらぬ身のそてうちふりし心しりきや』と・ある・御かへり・めもあやなりし御かた ちありさまに・え見たまひしのはすやありけん P0142 『から人のそてふることはとほけれとたちゐにつけてあはれとは見き』と・あるを・(2ウ)」かきりなくめつらしきに も・なみたおちて・かやうのかたさへたとたとしからす・人の御かとまておほしやれる・御きさきことはのほほゑま れつつ・ち經のやうにひろけてゐたまへり。 行幸には・みこたちなとのこる人なくつかうまつりたまふ。 東宮もおは します。 れいのからめいたるふねこきめくりて・もろこし・こまなとつくしたる・まひのくさともおほかり。 かくの こゑつつみのをとよをひひかす。 しかくの日・源氏のきみの御ゆふかけ・ゆゆしう御覧せられしを・おもほして・み す行とも・ところところにせさせ(3オ)」たまふを・ことはりと・あはれかりきこゆるに・春宮の女御はあなかちなりと・ にくみきこえたまふ。 かいしろなとには・殿上人も・地下も・心ことなりと・よの人におもはれたるいうそくのかき りえらせたまへり。 りんたいは・ゑもんのかみ・左兵衛のかみ・みなかんたちめたちすくしたまへるかきり・てをつ くしてととのへさせ給。 まひのしともなと・よになへてならぬをとりつつ・こもりゐて〈なん〉ならひける。 こたか きもみちのかけに・四十人のかいしろ・いひしらすふきたてたるもののねともにあひたる・山の松風・まこ(3ウ)」と のみやまおろしときこえて・ふきまよひ・いろいろさとちりまかふもみちのなかより・せいかいはのかかやきいてた るさま・いみしうおそろしきまて見ゆ。 かさしのもみちいたうちりすきて・かほのにほひにけをされたるここちすれ は・御前なるきくをおりて・左大將さしかへたまふ。 ひのくれかかるほと・けしきはかりうちしくれたるそらのけし きさへ・見しりかほなり。 いひしらすひかりた〈まへ〉る御かほに・いろいろうつろひたるきくのえならぬえたをか さして・けふはまたなきてをつくしたり。 いりあや(4オ)」のほと・そそろさむく・このよの物とも見えす・いふかひ なくものおもひしるましきしつのをまて・いはかくれやまのこのはにうつもれて・見たてまつりては・なみたをなん をとしける。 さては承香殿の四の御こ・またわらはにて・秋風樂まひたまひけるなん・さしつきの見ものなりける。 これらのおもしろさつきぬれは・ことことにはめもとまらす・かへりてはことさましにやありけん。 その夜源しの中 P0143 將・正三位し給。 とうの中將・正下のかかいし給。 かんたちめなとまて・〈みな〉さるへきかきりはよろこひし(4ウ)」 給も・このきみにひかれたてまつりたまふことなれは・人のめをとろかし・心をもよろこはせたまふ。 むかしのよゆ かしき人の御ちきりなり。 宮はそのころまかて給ぬれは・れいのひまもやあると・うかかひありくをやくにて・おほ いとのにはさはかれたまふ。 いととかのわか草たつねとり給てしを・二条〈の〉院に・人むかへたまふなりと・人の きこえけれは・いとこころつきなしとおもほしたり。 うちうちのありさまはしりたまはて・さもおほさんは・ことは りなれと・心うつくしう・れいの人のやうに・うらみのたまはは・われも(5オ)」うらなくうちかたりて・なくさめき こえてんものを・おもはすにのみ・とりないたまふ心つきなさに・あくかれたちて・さもあるましきすさひこともい てくるそかし。 人の御ありさまのかたほに・その事のあかぬかなとおほゆるきすもなし。 人よりさきに見たてまつり そめてしかは・あはれにやんことなくおもひきこゆるこころさしは・なへてならぬを・しりたまはぬほとこそあらめ ・さりともつゐにはおほしなをりなんと・おたしうかるかるしからぬ御心を(5ウ)」たのまるるかたはいとことなりけ り。 おさなき人は見つい給ままにいとおかしきこころさまかたちにて・なにこころもなくむつれまとはしきこえたま ふを・あはれとおもひきこえたまふことはひにそへてまさりゆく。 しはしは・とののうちの人にも・たれとしらせし とおほして・はなれたるたいに・御しつらひかかやくはかりして・われもあけくれいりゐたまひつつ・よろつの御事 ともを・おしへきこえたまふ。 手本かきてならはしなとしつつ・たたほかなりける御むすめなとを・むか(6オ)」へき こえたまへらんやうにおほしたり。 まところけいしなとよりはしめて・みなことにわかちてなに事もこころもとなか らす・つか〈う〉まつらせ給。 これみつよりほかの人はおほつかなくのみおもひきこえたり。 かのちち宮もえしりたま はさりけり。 わかきみは時々そおもひ〈いて〉きこえたまふ。 あまきみをはこひきこえつつなきたまふおりおりおほ かり。 きみおはするおりは・まきらはしてもおはするを・よるなとはときときこそとまりたまへ・ここかしこの御い P0144 とまなくて・くるれはいてたま(6ウ)」ふを・したひきこえたまふおりなとあるを・いとらうたくおもひきこえたまへ り。 二三日・内にもさふらひたまひ・おほいとのにもおはするほとは・いといたうくして・〈おもやせ〉なとしたま へは・心くるしうて・ははなきこもたらんここちして・ありきもしつこころなくおほえたまふ。 僧都もかくなときき たまふて・あやしきものからうれしとなんおほしける。 かの御ほうしなとしたまふにも・いかめしくとふらひきこえ たまひけり。 ふちつほのまかてたまへる・三条のみやに御ありさまもゆかし(7オ)」うてまいりたまへれは・王命婦・ 中納言の君・中務なとやうの人々たいめしたり。 けさやかにもてないたまふかなと・やすからすおもへと・おもひし つめて・おほかたの御ものかたりなときこえたまふほとに・兵部卿のみや・まいりたまへり。 この君おはすとききた まて・たいめしたまへり。 いとよしあるさまして・色めかしく・なよひたるさましたまへるを・おんなにて・見んは おかしかりぬへく・人しれす見たてまつり給にも・かたかたむつましうおほえたまて・こまやかに御も(7ウ)」のかた りきこえたまふ。 宮もこの御ありさまのつねよりことに・こころけさうして・なつかしううちとけたまへるを・いと めてたしと見たてまつりたまて・むこになとはおほしよらす。 をんなにて・見はやといろめける・御心には・まもら れたまひけり。 くれぬれは・みこうちへまいりたまふを・うらやましく・むかしはうへの御もてなしに・いとけちか く。 人つてならて・ものをもきこえなとしたましを・こよなくうとみたまへるも・つらくおほゆるそ・わりなきや。 しはしはもさふらふへけれと・ことそと(8オ)」侍らぬほとはおのつからおこたり侍を・さるへきことなとはおほせ事 も侍らんこそ・うれしくなとすくすくしうていてたまひぬ。 命婦もたはかりきこえんかたなく・宮の御けしきもあり しよりは・いとうきふしに・おほしおきて・こころとけぬ御けしきも・いとはつかしけれは・なにのしるしもなくて すきゆく。 はかなのちきりやとのみ・おほしみたるる事つきせす。 少納言はおほえす・おかしきよをも見るかな・こ れもあまうへの・たたこの御事をのみ・おほしなけきつつ・(8ウ)」おこなひたましほとけの御しるしにやと・やうやう P0145 おほゆるに・おほいとのいとやんことなくておはす・さらぬしのひところ・おほくかかつらひたまふめるそ・まこ とにおとなひたまはんほとには・むつかしうやとおほえける。 されとかくとりわきたまへる・御おほえのほとは・い とたのもしけなり。 御ふくは・ははかたなれは・三月にてこそはとて・つこもりには・ぬかせたてまつりたまふを・ 又おやもなくて・おいいてたましかは・いまこころくるしさに・まはゆきいろにはあらてをとて・くれなゐ・うすい ろ・むらさきのち(9オ)」のかきりおれる・御こうちきなとを・きたまへる御さま・いみしう・いまめかしう・おかし けなり。 おとこ君は・朝拜にまいりたまふとて・いとうるはしう・さうそきて・さしのそきたまへり。 けふよりは・ おとなしくなりたまへりやとて・うちゑみたまへる・いとめてたうあいきやうつきたまへり。 いつしかとひひなをし すゑて・そそきゐたまへり。 三尺のみつしひとよろひに・しなしなしつらひすゑて・又ちゐさきやともなとつくりあ つめて・たてまつりたまへるを・ところせきまて・あそひひろけ(9ウ)」給へり。 なやらふとて・いぬきかこれをみな うちこほち侍にけれは・つくろひ侍とて・いと大事とおほしたりけり。 いと心なき人のしわさにも侍なるかな・いま つくろはせ侍らん・けふはこといみして・ななき給そとて・いて給きしきところせきを・人々はしにいてて見たてま つれは・ひめ君もさしいてて見たてまつり給て・ひゐなのなかの源しのきみも・つくろひたてて・内へまいらせなと したまふを・ことしたにすこしをとなひさせ給へ・とをにあまりぬる人は・ひひなあそひはいみ侍〈なる〉ものを・ 又かく御をとこなと(10オ)」まうけたてまつらせたまては・あるへかしう・しめやかにこそみえたてまつらせたまはめ・ をくしまいるほとをたに・ものうくせさせたまてなと・少納言きこゆ。 あそひにのみ心をいれ給へれは・はつかしと おもはせたてまつらんとていへは・こころのうちに・われはさは・おとこまうけたるなりけり。 この人々のおとこと てあるは・みにくくこそあめれ・我はかくおかしけなる人を・もたりけるかなと・けふそおほししりける。 さはいへ と・御としのかすそふ・御しるしなめりかし。 かくおさなき御けしきの・ことにふれてしるけ(10ウ)」れは・とのの中 P0146 の人もあやしとおもふ事もありけれと・いとかくよつかぬ御そひふしならんとは・思よらさりけり。 君は・うちより ・おほいとのにまかてたまへり。 れいのうるはしく・よそほしき・御さまにて・心うつくしき御けしきもなく・くる しけれは・ことしよりたに・すこしよつきて・あらためたまふ・御心の見えは・いかにうれしからんなときこえたま へと・わさと・人すゑて・かしつきたまふとききたまてし・のちよりは・やんことなく・おほしさためたる事にこそ はと・いととこころをかれて・うとくはつかしうのみおほさるへし。 せめて見(11オ)」しらぬやうに・もてなして・み たれたまへる・御もてなしに・えしも心つよからす・御いらへなと・うちきこえたまへる・はたなを人よりは・いと ことなり。 よとせはかりか・このかみにおはすれは・さかりにととのほりて・心はつかしけなるさましたまへり。 な に事かは・この人のあかぬところは・ものしたまふ・わか心のけしからぬすさみに・かくうらみられたてまつるそか しとおほししらる。 おなし大臣ときこゆるなかにも・いとおほえやんことなくものし給か・宮はらにたたひとりいつ ききこえたまふ・御心をこりいとこよなくて・す(11ウ)」こしもおろかなるは・めさましとおもひきこえたまへるを・ おとこ君は・なとかさしもと・ならはしきこえ給ほとの・御こころのへたてともなるへし。 おとともかくたのもしけ なき御心を・つらしとはおもひきこえたまひなから・見たてまつり給ときは・うらみもわすれて・かしつきいとなみ きこえたまふ。 つとめていてたまふとて・御さうそくし給ところにも・わたりたまて・名たかき御をひなと・てつか らもていてたまて・おほんそのしりひきつくろひ・とかく御くつとらぬはかりにしたまふも・いとあはれなり。 内宴 なといふこととも侍へかなるを・これはさやうのおりに(12オ)」こそなときこえたまへと・それにはまされるともも侍 めり・これはたためなれぬさまに侍れはなんとて・しゐてささせたてまつり給。 けによろつにかしつきたてて・見た てまつり給に・いけるかひあり。 たまさかにても・むことては・かか覽人をいたしいれて見むにます事あらしと見え たまふ。 參さしにとても・あまた所〈に〉もありき給はす。 内・春宮・一院はかり・さてはふちつほの三条の宮に P0147 そまいりたまへる。 けふは又ことにも見え給かな。 ねひ給ままに・ゆゆしきまてなり・まさり給・御ありさまかなと ・人々めてきこゆるを・宮もみきちやうのひまよりほの見たまふに・つけては・(12ウ)」おほす事しけかりけり。 この 御事・しはすもすきにしかは・心もとなきに・この月はさりともとまつにつれなくてたちぬ。 御もののけにやと・よ 人もきこえさはくを・みやいとわひしく・この事により・身のいたつらになるへきとおほしなけくに・御ここちもい とくるしうて・なやみ給。 中將の君は・いととあはれにおほしあはせられて・みすほうなと・さとはなくて・ところ ところにせさせ給。 よの中のさためなきにつけても・はかなくてややみなんと・とりあつめなけき給に・二月十よ日の ほとに・おとこみやむまれ給ぬれは・なこりなく・うちにも・みや人もよろこひきこえたり。 いのちなかくもとおほ すは・(13オ)」心うけれと・こきてんなとの・うけはしけにのたまふとききしを・むなしくききなしたまはましかは・ 人わらはれにやあらましと・おほして・やうやうさはやかに・もてなし給。 うへのいつしかと・いふかしくおほしめ したる事かきりなし。 かの人しれぬ御こころにも・いみしうこころもとなくて・人まにまいりたまふて・うへのおほ つかなかりきこえ給を・まつ見たてまつりて・くはしくそうし侍らんときこえたまへと・むつかしきほとになんとて・ 見せたてまつらせ給はぬも・ことはりなり。 さるはいとあさましくめつらかなるまて・うつしとり給へるさまたかふ へくも(13ウ)」あらす見えたまふ。 宮御こころのおににいとくるしう・いかに人見たてまつるらん・あやしかりつるほ とのあやまりを・まさに人おもひとかめしや・さらぬはかなき事をたに・きすをもとむるよの中に・いかなる名の・ つゐにもりいつへきにかとおほしつつくるに・御身のみそいとくるしき〈や。 〉命婦のきみに・たまさかにあひたま ひては・いみしき事ともをつくし給へと・なにのかひあるへきにもあらす。 わかみやの御事もわりなくおほつかなか りきこえたまへは・なとかうしも・のたまはすらん・いまをのつから・見たてまつらせ給てんものをと・きこえなか ら・おもへるけ(14オ)」しき・かたみに・たたならす・かたはらいたき事ともなれは・おもふままに・まほにもえのた P0148 まはて・あはれおもふ事ともを・いかならんよに・人つてならてきこえしらせんとて・なきたまふ心くるしけなり 『いかさまにむかしむすへるちきりにてこのよにかかるなかのへたてそ』。 かかる事とそ心えかたけれとのたまふ。 命婦も宮のおほしたるさまなとを・見たてまつるに・えはしたなくもさしはなちきこえす 『見てもおもふ見ぬはたいかになけくらん(14ウ)」こやよの人のまとふてふやみ』。 あはれに心ゆるひもなき御事とも かなと・しのひて・きこえけり。 かくのみいひやるかたなくて・かへりたまふものから・人のものいひもわつらはし きを・わりなき事におほしのたまひて・命婦をもむかしおほしたりしやうには・えうちとけたまはす。 人はめたつま しう・なたらかにもてなし給ものから・こころつきなとおほすへきときもある〈へき〉を・いとわひしうおもひのほ かなる心ちすへし。 四月にそうちへまいり給。 ほとよりはおほきにおよすけ給て・やうやうおきかへりなとし給。 あ さましきまて(15オ)」まきれかたき御かほつきを・おほしよらぬ事にしあれは・たたならひなきとちは・にかよひ給へ るにこそはと・おほしめしけり。 おもほしかしつく事かきりなし。 源氏のきみをかきりなきものにおほしめしなから・ よの人のゆるしきこゆましかりしによりて・坊にもえすゑたてまつらせ給はすなりにしを・あかすくちをしう・たた 人にて・かたしけなき御ありさまかたちに・ねひもておはするを・御らんするままに・こころくるしうおほしめすを ・かくやんことなき御はらに・おなしひか(15ウ)」りにて・さしいてたまへれは・きすなきたまとおほしかしつくを・宮 はいかなるにつけても・むねのみひまなく・やすからす・物おほす。 れいの中將のきみ・こなたにて・御あそひなと したまふに・いたきいてたてまつらせ給て・みこたちあまたあれと・そこをのみなん・心ととめてかかるほとより・ 見なとせしかは・おもひわたさるるにやあらん・いとよくこそおほえたりけれ・ちゐさきほとは・みなかくのみある わさにやあらんとて・いみしううつくしとおもひきこえさせたまへり。 中將のきみおもてのいろかはるここち(16オ)」 して・おそろしうも・かたしけなくも・うれしう・あはれにも・さまさまにうつる心ちして・なみたおちぬへし。 も P0149 のかたりなとして・うちゑみたまへるか・いとゆゆしううつくしきに・わか身なから・これににたらんは・いみしう いたはしく・おほえたまふそ・あなかちなるや。 宮はわりなくかたはらいたきに・御あせもなかれてそおはしける。 中將のきみは・なかなかなるここちのかきみたるやうなれは・まかて給ぬ。 わか御方に・ふしたまひて・むね〈の〉 やるかたなきほとすくして・おほいとのへとおほす。 おまへの(16ウ)」せんさい・なにとなくあをみわたれるなかに・ とこなつのはなやかにさきいてたるを・おらせ給て・命婦のもとにかきたまふことはおもひやるへし。 『よそへつつ見るにこころはなくさまてつゆけさまさるなてしこのはな』。 はなにさかなんとおもふたまへしも・か ひなきよに侍けれはとあるを・さりぬへき人まにやありけん・御らんせさせて・たたちりはかり・この花ひらにとき こゆるを・わか御心にも・ものいとあはれにおほししらるるほとにて 『そてぬるるつゆのゆかりとおもふにも(17オ)」なをうとまれぬやまとなてしこ』・とはかりほのかにかきさしたるや うなるを・よろこひなからたてまつる。 れいの事なれはしるしあらしかしと・くつをれて・なかめふしたまへるほと に・むねうちさはきて・いみしううれしきにも・なみたはおちぬ。 つくつくと・ふしたるにも・やるかたなき心ちす れは・れいのなくさめには・西のたいにそわたり給。 しとけなくうちふくみたまへるひんくきなから・あされ・なよ ひ・たるうちきすかたにて・ふえを・なつかしくふきすさひつつ・のそき給へれは・女きみは・あり(17ウ)」つるはな の露にぬれたる心ちして・そひふし給へるさま・うつくしくらうたけなるに・あい行こほるるやうなり。 おはしなか ら・とくもわたりたまはぬか・なまうらめしけれは・れいならすそむき給へるなるへし。 はしの方についゐて・こち やとのたまへと・おとろかす。 いりぬるいそのとくちすさひて・くちおほひたまへるさま・いみしくされてうつくし。 あなにく・かかることならひたまひにけりな・見るめにあくはまさなきことそ〈よ〉とて・人めして・御こととりよ せさせて・ひかせたてまつり給。 さうのことは・なかのほそ(18オ)」をのたへかたきこそ・ところせけれとて・平てう P0150 にをしくたしてしらへたまふ。 かきあはせはかりひきて・さしやり給へれは・えゑしはてて・いとうつくしうひきた まふ。 ちゐさきほとに・さしやりて・ゆし給御てつきのいとうつくしけれは・らうたしとおほして・ふえふきならし つつ・をしきこえ給。 いとさとくて・かたきてうしともを・たたひとわたりにならひとり給。 おほかたらうらうしう・ おかしき御心はへを・おもひし事かなふとおほす。 ほそろくせりといふもの・なはにくけれと・おもしろくふきすま し給へるに・(18ウ)」かきあはせて・またわかけれと・はうしたかはす・上すめきたり。 おほとなあふらなと・まいり て・ゑ〈とも〉なと見給に・いて給へしとありつれは・人々こはつくりきこえつつ・あめふりぬへしなときこゆるに ・わかきみれいの心ほそくて・うちくし給へり。 ゑも見さして・うちうつふしておはすれは・らうたくて・御くしの いとめてたくて・こほれかかりたるを・かきなてて・ほかなるほとは・こひしくやおほすとの給へは・うなつき給。 まろもひと日も見たてまつらぬは・いとくるしうこそ〈は〉あれ・されときみは・またおさなくおはするほとは・心 やすく(19オ)」おもひきこえて・まつくねくねしく・うらみなとする人の・心やふらしとおもひて・しはしかくもあり くそよ・ものの心しりたまひ・れいのやうに見なしたてまつりては・ほかへもさらにいくまし・人のうらみおはしな とおもふも・よになかくありて・おもふさまに見えたてまつらんと思そかしなと・こまこまとかたらひきこえたまへ は・〈さすかに〉はつかしくて・ともかくもいらへきこえ給はす。 やかて御ひさによりかかりてねいり給ぬれは・い と心くるしうて・こよひはいてすなりぬとの給へは・みなたちて・御たいなとこなたにまいりたり。 ひめきみをこし たてま(19ウ)」つり給て・いてすなりぬときこえ給へは・なくさみておきたまへり。 もろともに・ものまいれと・はか なけにすさひて・さらはね給ねかし〈と・〉あやふけにおほしたり。 かかるを見すてては・いみしきみちなりとも・ おもむきかたくおほえ給。 かやうにととめられ給・おりおりなともおほかるを・をのつからもりきく人・おほいとの にきこえけれは・たれならん・いとめさましき事にもあなるかな・いままて・その人ときこえす・さやうにけしから P0151 すまつはし・たはふれ〈なと〉するは・あてやかに・心にくき人にはあらし・うちわたりなとにて・はかなく見たま ひけん人を・ものめかし給て・(20オ)」人もやとかめんとて・かくしたまふななり。 ここちなけにいわけてきこゆるは なと・さふらふ人々もきこえあへり。 うちにもかかる人ありと・きこしめして・いとおしくおととのおもひなけくな る事・いとものけなかりしほとを・おほなおほなかくわさとものしたる心なとを・さはかりの事・たとらぬはかりには あらしを・なとか・さなさけなくは・もてなすなるそなとのたまはすれと・かしこまりたるさまにて・御いらへもき こえ給はねは・こころゆかぬなかなるへしと御らんして・いとおしくおほしめす。 さるはすきすきしく・うちみたれ て・この見ゆる女房とも〈にも〉・(20ウ)」〈又〉御かたかたの人々なと・なへてならすとも見えきこえさめるを・いか なるもののくまにかくれありきてかは・かく人にもうらみらる覽とおほしのたまはす。 みかと・御としねひたまひに たれと・このかたはなをすてかたうおほして・うねへくら人なとを〈も〉・かたちこころあるをは・ことにもてはやし ・おほしめしたれは・よしあるみやつかへ人おほかるころなり。 はかなき事をもいひふれたまふには・もてはなるる 事もありかたきに・めなるるにやあらん・けにそあやしうすいたまはさめる。 あつまりてたはふれこときこえかかり なとするおりあれと・なさけなからぬ(21オ)」ほとに・うちいらへて・まことにはうちあひたまはぬを・まめやかにさ うさううしとおもひきこゆる人もあり。 としいたくおいたるないしのすけの・人もやむことなくおほえたかくはありな から・いみしくあためきたる心さまにて・そなたにはおもからぬありけり。 かくさたすくるまてなとかくみたるらん と・いふかしくおほえ給けれは・たはふれこといひふれて・心みたまふに・にけなくは・おもはさりけり。 あさまし とおほしなから・さすかにかかるもおかしくて・ものなとのたまてけれと・人のもりきかんも・いとふるめかしく・ われはつかしきほと(21ウ)」なれは・つれなくもてなしたまへるを・女はいとつらしとおもへり。 うへの御けつりくし にさふらひけるを・はてにけれは・うへはみうちきの人めして・いてさせたまひぬるほとに・又人もなくて・このな P0152 いし・つねよりも・きよけに・やうたいかしらつきなまめいて・さうそくありさまもいとはなやかに・このもしく見 ゆるを・さもふりかたくもと・心つきなく見たまふものから・いかにおもふらんと・さすかにすくしかたくて・もの すそをひきをとろかしたまへれは・かはほりのえならすゑかきたるをさしかくして・見かへりたるまみいといたくみ ののへたれと・まかはいた(22オ)」くくろみおちいりて・いみしうはつれそそけたり。 につかはしからぬあふきのさま かなと見たまはて・わかもたまへるにさしかへて見たまへは・あかきかみのうつるはかりいろふかきに・こたかきも りのかたをぬりかへしたり。 かたつかたに・てはいとさたすきたれとよしなからす・もりのした草おいぬれはなとか きすさみたるを・ことしもこそあれ・うたてのこころはへやと・ほおゑまれなから・もりこそなつとの〈なん〉見ゆ るとて・なにくれとのたまふほとも・にけなくや人見つけんと・くるしきを・女はさもおもひたらす(22ウ)」 『きみしこはたなれのこまにかりかはんさかりすきたるしたはなりとも』と・いふさまこよなくいろめきたり 『ささわけはひとやとかめんいつとなくこまなつくめるもりのこかくれ』。 わつらはしさにとてたち給を・ひかへて またかかるものをこそ思侍らね・いまさらなる身のはちになんとて・なくさまもいとをかしからねと・いまきこえん ・おもひなからの身そやとて・ひきはなちていて給を・せめておよひつつ・はしはしらとえんにうらみかくるを・う へはみうちきはてて・みさうしより(23オ)」のそかせ給けり。 につかはしからぬあはひかなと・おかしうおほされて・ すき心なしと・つねにもてなやまるめるを・さはいへと・すくささりけるはとて・わらはせ給へは・内侍はなまはゆ けれと・にくからぬ人ゆへは・ぬれきぬをたに・しほりきまほしかるたくひもあんなれはにや・いたうもあらかひき こえさせす。 人々もおもひのほかなる事かなと・あつかうへかめるを・頭中將ききつけて・いたらぬくまなき心に・ またおもひよらさりけるよと・おとろかるるに・つきせぬこのみのこころも・見まほしうなりにけれは・かたらひつ きにけり。 (23ウ)」この君も人よりはいとことなるを・かのつれなふき人の御なくさめにもせんと・おもひけれと・見ま P0153 くほしきは・なをかきりありけりとや。 うたてのこのみや・いたうしのふれは・源しのきみは・えしり給はす。 見つ けきこえては・まつうらみきこゆるを・よはひのほといとほしけれは・なくさめんとはおほせと・かなはぬ物うさに・ いとひさしうなりにけり。 ゆふたちしてなこりすすしきよひのまきれに・うむめいてんのわたりをたたすみありき給 へは・この内侍・ひはをいとおもしろくひきゐたり。 御前なとにても・をとこかたの御あそひにましりても・ことに まさ(24オ)」る人なき上すなれは・もののうらめしうおほえけるおりから・いとあはれにきこゆ。 うりつくりなりやし なましと・こゑはいとおかしくてうたふそ・すこしこころつきなき。 文君なといひけんむかしの人も・かくやおかし かりけんとみみとまりたまふ。 ひきやみて・いといたうよをおもひみたれたるけしきなり。 〈きみ〉あつまやを・し のひやかにうたひてたちよりたまへるに・をしひらいて・きませとうちそへたるも・れいにたかひたる心ちそするや 『たちぬるる人しもあらしあつまやにうたてもかかるあまそそきかな』と・うちなけく(24ウ)」を・われひとりしもき きおふましけれと・うとましやなに事をかくまてとおほゆ 『人つまはあなわつらはしあつまやのまやのあまりもなれしとそおもふ』とて・うちすきなまほしけれと・あまりは したなくやとおもひかへして・人にしたかへは・すこしはやりかなる・たはふれことなと・うちいひかはして・これ もめつらかなる心ちそし給。 頭の中將はこのきみのいたうまめたちすくして・つねにもとき給か・ねたきをつれなく て・うちうちにありきたまふかたおほかるへかんめるを・いかて見あらはさんとのみ思(25オ)」わたるに・これを見つ けたるここち・いとうれしうおかしとおもふ。 かかるおりにすこしをとしきこえて・御心まとはして・こりぬやとい はんとおもひて・たゆめきこゆ。 風ひややかにうちふきて・ややふけゆくほと・すこしまとろむにやとおほゆるけし きなれは・いとやをらいりくるに・きみはそらねふりして・とけてし〈ね〉られぬころなれは・ふとききつけて・こ の中將と〈は〉おもひ〈も〉よらす・なをわすれかたくすなる・すりのかみなとやうにこそ〈は〉あらめとおほすに P0154 ・おとなおとなしき人に・かくにけなきふるまひして・見つけられんことのくるし(25ウ)」さに・さりや・〈あな〉わつ らはし・いてなんよ・くものふるまひはしるかりつらんものを・心うく・すかいたまひけるよとて・なをしはかりを とりて・屏風のうしろにいりたまひぬ。 中將・おかしきを・ねんして・ひきたてたまへる屏風のもとによりて・こ ほこほとたたみよせなとして・おとろおとろしうさはかすに・内侍は・ねひたれと・いたうよしはみやはらきたる人の ・さきさきもかやうにて・心うこかすおりおりありける〈に〉ならひたれは・いみしうこころあはたたしきにも・こ の君をいかにしきこえんとするにかと・わひしうて・ふるふふるふ・つとひかへたり。 たれとしられて・いかていて (26オ)」なんとおほせと・しとけなきすかたにて・かうふりなとうちゆかめて・はしらんうしろてをおもふに・われな からいとをこなるへしとおほしやすらふ。 中將もいかて〈か〉われとしられきこえしとおもひて・物もいはす・たた いみしういかれるけしきに・もてなして・たちをひきぬくに・女あか君あか君とむかひて・ててをするに・おとこわら ひぬへし。 このましうわかやきて・もてなしたるうはへこそさてもありけれ・五十七八の人のうちとけて・ものおも ひさはけるけしきは・えならぬ廿よのわかひとたちの御中にて・ものをちしたる(26ウ)」いとつきなし。 かくあらぬさ まに・もてひかめておそろしけなるありさまを見すれと・なかなかしるく見つけ給て・われとしりてことさらにする なりけりと・おこになりぬ。 その人なりけりと見たまふに・いとおかしけれは・たちぬきたるかひなをとらへて・い といたうつみたまへれは・中將ねたきものからえたへてわらひぬ。 まことはうつし心かとよ・たはふれにくしや・い てこのなをしきんとの給へと・つととらへて・さらにゆるしきこえす。 さらはもろともにこそとて・中將のをひをと きてひきぬかせ給へは・ぬかしとすまふを・とかくひこし(27オ)」しろふほとに・ほころひはほろほろとたゆれは中將 『つつむめるなやもりいてんひきかはしかくほころふるなかのたもとに』・うへにとりきは・しるからんをといふき み P0155 『かくれなきものとしるしるなつころもきたるをうすきこころとそ見る』と・いひかはしてうらやみなく・しとけな きすかたにひきなされて・みないて給ひぬ。 きみいとくちおしう見つけられぬることとおもふたまへり。 内侍はあさ ましうおほえけれは・をちとまりたる御さしぬきをひなとつつみてたてまつれたり(27ウ)」 『うらみてもいふかひそなきたちかさねひきてかへりしなみのなこりに』・そこもあらはにとあり。 おもなのさまや と見たまふも・にくけれと・わりなしとおもひたりしさまもさすかにて 『あらたちしなみにこころはさはかねとよせけむいそをいかかうらみぬ』とのみ・なんありける。 をひは中將のなり けり。 わか御なをしよりはいろふかしと見たまふに・はたそてもなかりけり。 あやしの事ともや・おりたちみたるる 人は・むへ・まして・おこかましきことともおほからんと・いとと御心おさめられたまふ。 中將のとのゐところより ・(28オ)」これまつとちつけさせ給へと・おしつつみておこせたり。 いかてとりつらんとこころやまし・このおひをえ さらましかはとおほす。 そのいろのかみにつつみて 『なかたえはかことやおふとあやふさにはなたのをひをとりてたに見す』とて・やりたまふたちかへり 『きみにかくひきとられけるおひなれはかくてたえぬるなかとかこたん』。 えのかれさせ給はしとあり。 日たけてを のをの・殿上にまいりたまへり。 いとしつやかにものとほきさまして・(28ウ)」おはするに・頭のきみもいとおかしけ れと・おほやけことしけく・そうしくたす日にて・いとうるわしくすくしたるを・見るもかたみにほをゑまれたまひ けり。 人まにさしよりて・ものかくしはこりぬらんかしとて・いとねたけなるそはめなり。 なとてか・さしもあらん ・たちなからかへりけん人こそ・いとをしけれ・まことは・うしやよの中と・いひあはせたまて・とこのやまなると かたみにくちかためたまけり。 さてそののちは・ともすれは・ことのついてことに・いひむかふるくさはいなるを・ いとものむつかしき人ゆへとおほしこるへし。 (29オ)」女はなをいみしくえんにうらみかくるを・わひしと〈おもひ〉 P0156 ありきたまふ。 中將・いもうとのひめ君に〈たに〉きこえて・たた・さへいおりの・をとしくさにせんとおもふなり けり。 やんことなき御はらはらのみこたちも・うへの御もてなしのこよなきに・わつらはしくて・このきみをは・い とことにさりきこえたまへるを・この中將そさらにをしけたれきこえしと・はかなき事につけてもおもひいとなみき こえためる。 みかとの御こといふはかりのへたてこそあれ・われもおなし大臣ときこゆる中にも・おほえことなるか ・みこはらに又なくかしつかれたる・なに(29ウ)」はかりおとるへききはともおほえぬなるへし。 人からは・けにある へきかきりととのひて・なに事も〈あらま〉ほしくたらひてそものしたまひける。 この御なかのいとみこそ・あやし き事もおほかりしか。 されとこれにはうるさくてなん。 そのとしの十月にそきさきゐたまふめりし。 源しの君宰相に なりたまへり。 みかとおりゐさせ給なんの御心つかひちかくならせ給ひて・このわかみやを・坊にはとおもひきこえ させたまふに・御うしろみしたまふへき人おはせす。 御はらからみなみこたちにて・源氏のおほやけことしり(30オ)」 しりたまふすちならねは・ははみやをたに・うこきなきさまに・なしをきたてまつりて・つよりにとおほすになんあ りける。 こきてんいととこころうこき給ことはりなり。 されと東宮の御よいとちかくなりぬれは・うたかひなき御く らゐなり・おもほしのとめよとそきこえたまける。 けに春宮の御ははにて廿よねんになり給ぬる・女御ををきたてま つりたまひては・ひきこしたまひかたき御ことなりかしと・れいのやすからす・よ人もきこえけれと・人の御ほとの いとやんことなきにやゆるされたまひけん。 まいり(30ウ)」たまふよの御ともに・さい將のきみもつかうまつり給。 お なしききさきときこゆるなかにも・きさきはらのみこのたまひかりかかやきて・たくひなき御おほえにさへ・ものし たまへは・人もいとことにおもひかしつききこえたり。 ましてわりなき御こころは・みこしのうちも・おもひやられ て・いととおよひなきここちし給に・すすろはしきまてなん 『つきもせぬこころのやみにくるるかなくもゐに人を見るにつけても』とのみ・ひとりこたれつつ・ものいとあはれ P0157 なり。 みこはおよ(31オ)」・すけたまふ・月日にそへて・いと見たてまつりわきかたけなるを・宮いとくるしとおほせと ・おもひよる人のなきなめりかし。 けにいかさまにつくりかへてかは・おとらぬ御ひかりのよにいてものしたまはま しと・月日のひかりのそらにかよひたるやうに・おはするなめりとそおもへるとや(31ウ)」.

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